なぜ私たちは「くんま」を訪れたのか
2025年8月16日・17日、スターグローブの生徒10名が静岡県浜松市天竜区の山里「くんま」を訪れました。この合宿は単なる自然体験ではありません。
私たちスターグローブは、2027年4月に「くんま」でフリースクール・通信制高校の開設を計画しています。かつて地域に存在した「夜の授業参観」という、子どもを中心に地域住民が学び合う文化を再生し、地域全体が学びの場となる「くんま農山村キャンパス」の創造を目指しています。
今回の合宿は、その第一歩となる「スタートアップ合宿」。地域の皆様との信頼関係を築き、くんまの豊かな資源(森・茶・棚田・歴史文化)を実際に体験し、将来の教育プログラムの可能性を探る重要な機会でした。
合宿の3つの目的
1. 地域との関係構築
くんまの皆様と顔の見える関係を作り、相互理解を深める
2. 地域資源の教材化検証
森・茶・棚田などを活用した学習プログラムの可能性を探る
3. 共育文化の体感
地域全体で子どもを育てる「共育」の価値を実体験する
森が教える地球の歴史
ノルディックウォークで黒滝を目指す道中、拾い上げた石から学びが生まれました。
「この枕状溶岩は、ここが大昔海の底だった証拠。黒滝を作り、チャートは深海の生物の化石なんだ」
足元の石ころ一つひとつが、何億年もの地球の物語を語りかけてきます。これこそ、教科書では学べない「生きた地質学」の授業。将来のカリキュラムに組み込める貴重な地域資源であることを確信しました。
世界とつながる茶園の可能性
中国・武夷山の茶園オーナーとのオンライン交流では、くんまの茶葉で武夷山流の紅茶を淹れる実演も。地元の茶農家さんも参加し、地域を越えた学びの場が自然に生まれました。これは将来の「焙煎の町計画」につながる重要な体験となりました。
夜の授業参観の原型を体感
農家民宿「遊び屋」での夕食は、まさに「夜の授業参観」の原型でした。元教師の大平さんご夫妻、山口さん、教師を目指す高校生のまおさん。世代を超えた教育談義は深夜まで続き、地域全体が学びの場になる可能性を強く感じました。
「子育てって、みんなでするものだと思うんです」
参加した保護者の言葉に、くんまの共育文化の本質が表れていました。
地域貢献という学び
朝一番、子どもたちが自発的に決めたこと。それは「お世話になった場所をきれいにしよう」という恩返しの活動でした。
NPO法人耕の本部周辺を3時間かけて整備。これは単なる奉仕活動ではありません。学びと地域貢献を結びつける、まさにスターグローブが目指す教育の形でした。
ピザ窯が紡ぐ交流の輪
事前に何度も練習してきたピザ作り。その成果を地域の方々への恩返しとして披露しました。くんまの新鮮野菜をトッピングした熱々のピザを囲み、地域の方々との会話が弾みます。
「君たちのおかげで、こんなに気持ちよく過ごせるよ」
この体験は、将来の教育プログラムで大切にしたい「プロセスを価値化する」という焙煎の町計画のコンセプトにもつながります。
時を超えて受け継がれるもの
大栗安の棚田、約4500年前のヒラシロ遺跡。何代にもわたって守られてきた風景に触れ、持続可能な地域づくりと教育の融合という私たちのビジョンがより明確になりました。
この合宿で見えてきたもの
1. 地域資源の教材化の可能性
- 地質・自然科学:黒滝への道のりは「生きた地球科学」の教室
- 農業・食育:茶園、棚田での体験は循環型社会を学ぶ最高の教材
- 歴史・文化:縄文遺跡から現代まで、時間軸で学ぶ地域史
- 国際交流:武夷山との茶文化交流は、グローバル教育の実践例
2. 共育文化の確かな土壌
初対面でも本音で語り合える温かさ、地域全体で子どもを見守る風土。これは都市部では失われつつある、かけがえのない教育資源です。
3. 若者と地域をつなぐ可能性
参加した中高生たちが、地域の課題について真剣に考え、自分たちにできることを実践する姿。これこそが、関係人口・交流人口を増やし、地域の未来を拓く鍵となるでしょう。
次のステップへ
この合宿は挑戦の始まりです。
くんまの皆様が主役であり、私たちは必要なところを補う伴走者。この立場を明確にしながら、「子どもたちの学び」と「地域の未来づくり」を同じテーブルに乗せる挑戦を続けていきます。
保護者の皆様へ
お子様たちは、この2日間で「学び」の本質に触れました。それは、教室の中だけでなく、地域全体が学びの場になること。そして、学んだことを誰かのために活かすという「循環」の大切さです。
この経験は、2027年から始まる新しい学びの形への第一歩。お子様たちは、その開拓者として貴重な体験を積まれました。
この素晴らしいスタートアップ合宿を支えてくださった、NPO法人耕の皆様、くんま地域の皆様、
農家民宿「遊び屋」の大平さんご夫妻、そして「くんま農山村キャンパス創造委員会」の皆様に、心から感謝申し上げます。
小さく始め、大きく育てる――その第一歩を、確かに踏み出すことができました。